談合業者の賠償金減額可決 談合に寛容な千葉県政!?
2016.12.23 - ブログ
平成28年12月県議会に、千葉県発注の工事で談合を繰り返した業者への賠償金を減額する議案が提案され、自民党などの賛成多数で可決されました。
千葉県、千葉県議会は、県民の皆様ではなく、誰の顔を見て県政運営しているのか極めて疑問です。以下に、談合問題を通して見える現在の千葉県政、千葉県議会の状況について記述します。
〇山武談合事件の概要
平成26年2月3日、公正取引委員会は、千葉県が発注する土木工事等において、独占禁止法で禁止されている談合があったとして、山武地区の業者に対し排除措置命令(30社)及び約2億2千万円の課徴金納付命令(20社)を行いました。
それら業者は、平成21年4月以降数年にわたり、約200件の工事で談合を繰り返していました。その工事の中には、千葉県でも犠牲者を出した東日本大震災からの復旧・復興のための工事も数多く含まれていました。
具体的には、受注を希望する業者は、入札日の4日前に、千葉県建設業協会山武支部の事務所(東金市)に集まり、話し合いをして、受注予定業者及び受注金額を決め、受注予定業者以外は受注予定業者が受注できるように協力するなどして、公共の利益に反して、千葉県発注の工事における競争を実質的に制限し、不当な利益を得ていました。
千葉県内で摘発された談合事件としては、過去最大級であり、かつ数年にわたって繰り返し談合が行われた事案であって極めて悪質と評価されるものです。
平成26年8月、千葉県は、課徴金納付命令を受けた20社のうち、破産した1社を除く19社に対して、契約に基づき賠償金(約11億円)を請求しました。すると、賠償請求された19社のうち、解散した2社を除く17社が、県への賠償金(9億7千万円)の減額などを求めて、千葉簡易裁判所に民事調停を申し立てました。
〇県議会の動向
平成28年3月、千葉県建設業協会から提出された請願「損害賠償請求の軽減を求めることについて」が、自民党などの賛成多数で、県議会で採択されました(表1)。これは、地方自治の二元代表制の一翼を担う県議会が県に対し、賠償金の軽減を公に求めた(県に圧力をかけた)ものと評価されます。
表1 賠償金軽減に係る請願の賛否
※市民ネット・社民・無所属
平成28年11月、県は、賠償金を9億7千万円から3億9千万円に減額する議案を県議会に上程しました。
平成28年12月、県議会は、当該議案を、自民党などの賛成多数で可決しました(表2)。これで、県として、賠償金を減額することが決定してしまいました。
表2 賠償金軽減の議案に対する賛否
〇あみなか肇が調停に反対した理由
・極めて悪質な談合であること
談合に加担した業者は、契約の前段階で、すでに談合して受注業者を決定しており、この時点で違法行為を認識しています。
そして、談合が発覚した場合、契約額の20%を賠償金として支払わなければならないことが契約に明示され、それを認識したうえで、契約したにも関わらず、いざ、談合が発覚すると、賠償金の軽減を主張していますが、これは幾重にも県及び県民を愚弄するものです。
また、今回摘発された談合は、長期間にわたり、繰り返し行われ、加担した業者数が30社にも及ぶ極めて悪質なものです。また、震災からの復旧・復興工事を食い物にするなど道義的にも看過できません。
そして、談合して不当な利益を得ておきながら、それが発覚し、県から賠償金を請求されると、各業者の支払い能力に関わらず結託して賠償金軽減のための調停を申し立て、談合の果実を再度貪ろうとする、この談合体質にはあきれ果て言うべき言葉が見つかりません。
・県が調停に応じる理由がおかしい
県は調停に応じる理由として、業者が倒産すると地域経済に悪影響を与えるとしていますが、倒産を恐れるなら談合をしなければ良かっただけのことであり、被害者である県が考慮すべき事情ではありません。
また、調停にあたって、県が委託した公認会計士は、業者の財務状況等を検証し、賠償金を減額しなくても支払うことが可能と評価していることから、県は賠償金の減額に応ずる必要はないと考えます。
・談合に対するペナルティが有名無実化してしまう(悪しき前例となる)
県の工事契約では、談合が行われた場合、契約金額の20%を賠償金として請求するとしていますが、今回の調停によりそのペナルティが有名無実化し、談合しても調停を申し立てれば、賠償金が軽減されるという悪しき前例となってしまい、入札談合に対する抑止効果がなくなってしまいます。また、入札談合に厳しく対応し、その防止に努めようとする全国的な流れに大きく逆行してしまいます。
〇県の対応にも多くの問題!?指名停止期間を短縮!
平成26年2月3日の公正取引委員会の排除措置命令に伴い、翌2月4日、千葉県は「指名停止等検討委員会」において、談合に加わった業者の指名停止期間を12か月としました。そのうえで今回の事案は特別な事由に該当するものとして、さらに指名停止期間を半分短縮し、6か月間の指名停止期間としました。
しかし、そもそも「千葉県建設工事請負業者等指名停止措置要領」によれば、独占禁止法違反行為に係る指名停止期間は12か月以上24か月以内とされており、これだけの悪質かつ大規模な独占禁止法違反であるにも関わらず、同委員会が当該要領に規定された措置基準のうち最も短い12か月の指名停止期間としたのかについて疑問が残ります。
それのみならず、今回の事案が特別の事由に該当するものとして、指名停止期間を半分に短縮したことについても、大きな疑問が残ります。
〇指名期間を短縮した理由がおかしい!?
同委員会は、指名停止期間を短縮する特別の事由として、
『山武地域の県発注工事や災害対応の中核を担ってきたほとんどの業者が対象となっており、公共工事からの排除期間が12か月の長期に及ぶと、
① 道路・河川等の施設の良好な維持や出水・地震など災害時の緊急対応が困難とな り、県民の安全な生活や社会活動に支障がある
② 九十九里地域の津波対策である河川・海岸の復興事業への影響がある。』
としていますが、地域ぐるみのより大掛かりな談合をすれば、より重い処分を課すべきというごく普通の常識的な県民の考えの真逆の措置となっています。
また、東日本大震災からの復旧・復興のための公共事業を食い物にしたにも関わらず、復興事業への影響を期間短縮の理由にあげているのも全く理解できません。
〇指名停止に制裁効果はなかった!?
上述のとおり、県は談合に加わった業者の指名停止期間を、平成26年2月6日~翌年2月5日の1年間だったものを、特別の事由に該当するとして、平成26年2月6日~同年8月5日の6か月に短縮しました。
この6か月間、2月6日から8月5日という期間は、公共事業の工事発注としては閑散期であり、当該期間を指名停止したとしても、制裁措置としての実質的な効果はないものと考えられます。
実際に、排除措置命令対象事業者である30社の県工事受注状況は、約4か月間の指名停止期間を含む平成26年度は約27億7千万円、指名停止期間がなかった平成27年度は約30億2千万円と、実質的な制裁効果がなかったことが明らかになっています。
〇指名停止等検討委員会組織のあり方について
今回の事案の場合、6か月間の指名停止期間の短縮を行えば、制裁の実質的効果がなくなるのは、当該委員会の委員ならだれもが認識していたはずです。こうした、制裁効果の実質的な骨抜きは、不法行為を犯した事業者への処分として、県民の理解が得られるところではないと考えます。
公共事業においては官製談合も多発しており、本県においても、水道局発注の配水管工事に関し、最低制限価格を業者に漏らしたとして、官製談合防止法違反などの容疑で職員が逮捕される事案があったばかりです。
また、本県においては、土木職などの技術職員が、県を退職後、民間の建設関係事業者へ数多く再就職している現状があります。
こうした中、県土整備部を中心とした委員会構成には問題があり、弁護士や大学教員などの有識者・第三者の委員会への参加など、委員会のあり方を見直すよう、県に強く要望していきます。
〇談合した業者が自民党支部へ寄付金!?
平成28年3月には、談合による賠償金の軽減を求める請願が、自民党などの賛成で採択されました。平成28年3月18日の東京新聞によれば、その請願の紹介議員の一人(県議会議員)が代表を努める自民党の支部は、平成26年7月、談合した業者の一社から100万円の寄付金を受けていた、と報道されました。
つまり、談合の賠償金を県に支払えば、倒産・廃業に至り、地域の経済や災害対策に影響を与えるとして、その軽減を求めることとなる業者が、自民党支部には寄付をする余裕があったこととなります。
そもそも、その業者が自民党支部に寄付をしたとされる平成26年7月は、その業者にとって、まさに談合による指名停止期間中にあたります。そのような寄付について、県民の皆様の中でも大きな議論があるものと考えます。
〇今後の対応
あみなか肇は、県民の皆様の税金を詐取する談合の再発防止のため、県に対し、不断の入札改革を求めていきます。同時に、二度とこうした事件が発生しないよう、県への監視を強めていきます。
その一方、現在の県議会の議席構成では、単独過半数を有する最大会派の決定が、県議会の意思となって、県政を決定してしまいます。県民の皆様には、こうした県政・県議会の状況に関心を寄せていただき、あるべき県政の姿について、是非ご意見をお寄せいただきたいと存じます。
千葉県議会議員
あみなか肇